【風雨来記4感想】風は丘をこえて

母里ちあり

来る日も来る日も朝起きてから夜寝るまで母里ちありについて考え続けて半年、ずっっと発見の毎日。

「これどういうことだろう?」「あ、これそういうことだったのか?」と思えることがおもしろいくらい増え続けていく。楽しすぎる。

特に印象深かったのが、エンディング、岐阜からの旅立ちのあのシーンに「風」が吹いていることに気付いた瞬間。今回はこれについての話。



最近調べたり、考えたりしたこと。

  • きらきらは平安時代以前からの古語。やばいは江戸時代からの俗語。
  • 「こちょばい」方言から考える、古代出雲と畿内の風土記的関係。
  • 作中に出てくる「夫婦」の、それぞれの形について。(数えたら10組くらいいる)
  • 「夜明け前」の例のセリフの本来の意味。
  • リリさんのふわふわの髪に毎日大変な手間がかかっていること。
  • 母里姓の由来考察だけで論文一本かけるくらいの奥深い歴史があること。
  • リリさんの結婚観が変わったのは、和宮の影響もあったりするのか。
    (岐阜に来て色々なところへ言って考えた、という言葉から)
  • 4作中で存在感の強い白山の神様は、「生(イザナギ)」と「死(イザナミ)」の間を取り持った女神(ある意味、夫婦喧嘩調停の神)。
  • 作中ではストーリー面でも、音楽面でも、そしてビジュアル面でも、
    「風」は重要なモチーフになっている


などなど。

そんな中からひとつ、今回は、「風」の描写について書いてみようと思う。




風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


■主に「風雨来記4ちあり編」について書きます。ネタバレ多め。
■「自分はこう考えたよ」という、個人的な感想・考察記録です。
■ 記事内で、ゲーム内スクリーンショットを権利元様を表記した上で引用しています。

■ 特に記載のないイラストは、投稿者(ねもと)による非公式の二次創作です。




風雨来記4の「風」


風雨来記4全体で考えると、「風」を象徴する人物といえば、根っから旅人である主人公はもちろんのこととして、やはり柚原日陽さんをおいては語れないだろう。


風のように現れ、また去ってゆく様もそうだし、エンディングの湿原で強い風に吹かれる描写も、非常に印象的だ。

なによりも、「風」の象徴だった初代主人公の魂を受け継ぐような、太陽の様なまぶしい強さと、時折見せる脆さと弱さ、自分の力で道を選び続けられる自由さ、根底にあるまっすぐなたくましさ、そして純粋な、風のような気まぐれさ……

と、日陽さんについては自分以上に語ってくれる人が他にいるだろうから、ここではこのくらいにしておく。


さておき、「風雨来記4」は、タイトルの頭に堂々と「風」と冠されているくらいなので、物語的にもビジュアル的にも、「風」は今作において重要なファクターのひとつとなっている。

今回は、母里ちありの物語においての「ビジュアルとしての風」に着目してみたい。



岐阜を発つ風

まずはこの、最高の笑顔のリリさんを、よーくみてみよう。
「風」を感じられるだろうか。

(彼女が橋に立つ意味については以前書いたので、そちらも是非ご一読いただきたい)


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




おそらく、この場面だけを見ても解りづらいんじゃないだろうか。



自分が「この風」に気付いたのは、最初のクリアから半年たった頃だった。
イラストを描くためにずーっと色んな場面のリリさんを見比べていて、あれ、髪にもイヤリングにも、動きがあるけどこの動きって……と、不意に気付いた。

その瞬間、めちゃくちゃ感動したのを覚えている。



ビジュアルとして見た場合、「風」は、人物達の心理や状況の演出でもある。


このシーンには、ゆるやかに風が吹いている。
橋を越えて、その先へ。


それの意味することを書く前に、この場面だけを見てもわかりづらいと言う人も多いと思うので、まず他のシーンと見比べてみよう。



明日は明日の風が吹く!(停滞。吹かない日もある)

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


最初の一週間、立ち止まっていた種蔵。
風は吹いていない。


強い風(揺れる心、変化、二人の間に吹く風)

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


左から右へ。丘の下から吹き上げる風。


すれ違いを乗り越えて、秘密も共有し、「ただ偶然であっただけの相手」から、関係が大きく変化したふたり。
その間を、強い風が吹き抜けてゆく。

今はまだ平行線の風。

この先、風向きはどちらに向くのか。


ここは分かりやすい。というか、
自分はずっと、ちあり編で風の描写があるのはここだけだと思っていた。



風が止む(停滞。風の象徴=旅人の主人公と開く距離)

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG
風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG
風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



立ち止まってしまったリリ。
うさぎのイヤリングやおくれ毛をみると分かるように、「風」がどちらにも吹いていない。

立ち止まってしまえば、自分自身が「風」である旅人=主人公との距離は離れてしまう。
けれど、重なった時間は、決して無駄じゃなかった。


これは、勇気を得た場合との対比でもあるだろう。
その上であらためて、「違った展開」、もうひとつのエンディングを見て見よう。



順風(二人を追い風が結ぶ。これから進む道へ、前へ)

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


勇気を出して踏み出した一歩の、その先。


ブラウザ機能で拡大して、馬籠の「風」と見比べるとより分かりやすいと思う。

イヤリング、おくれ毛、左右のさげた髪。
パーカーのひもや前髪も浮き上がっている。
ゆるやかな風が、画面手前から奥へ吹く。


これは、このひとつ前のシーンで主人公が独白した通りの「順風」だ。
※順風:進む方向に吹く風。追い風。



風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




風は丘をこえて

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG

岐阜を発つこの場面で流れている曲は、風雨来記シリーズをつなぐ主題曲とも言える「風は丘をこえて」だ。

風雨来記1・2・3・4、シリーズすべてで流れるこの曲は、「ストーリー」「ビジュアル」と並ぶ風雨来記の屋台骨のひとつ「音楽」においての「風」の象徴でもある。
(厳密には「2」のみアレンジVerの「旅は遥かに」。海を渡ってきた風、がコンセプト)


「風は丘をこえて」

作曲した風水嵯峨氏は、この曲のコンセプトをこう語っている。

森を抜け、川を越え、風が吹く。
その行く先に、まだ見ぬあの丘の向こうがあり、そんな風のように自分も流れてゆく旅。

風雨来記オフィシャルコンプリートワークス




風雨来記/ Nippon Ichi Software, inc./FOG


あの丘の向こうは、こちら側からは見えない。

その向こう側を想像すれば、不安になるだろうか。
ワクワクするだろうか。
きっと、どっちもだと思う。

恐いと同時に、面白い。

それは、ここから先に続く未来と同じ様に。


風雨来記3/Nippon Ichi Software, inc./FOG


風雨来記3/Nippon Ichi Software, inc./FOG




最高の瞬間

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




そこまで考えて、ああ、だから自分は、このエンディングを見た時にあんなにも「風雨来記」を感じたんだなぁ。
そんな風に感じさせてくれるリリさんだから、こんなにべた惚れしちゃったんだ。

そうあらためて思って、それまでも最高だと思っていたエンディングが、自分の中でもっともっと最高になった。



風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



ふと思う。

たぶん、作中で語られている「最高の一枚」にしても、「最高の場所」にしても、もし手に入れられたとして、それはあくまでもその時点においての「最高」であって、進み続けていれば次の最高があるものなのかもしれない。

けっして無いものねだりはせずに、手に入れた大切な「最高」に心から満足して、でも、それと同時に次の最高があるかもしれないと言う期待は無くさずに、立ち止まらずにいつまでも前へ進み続けること。


そんな風に、旅をしていきたい。



番外編(風を切る)

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



ここは、厳密には風とはちょっと違って、全力ダッシュした(リリさん自身が風を切った)ことで髪が少し乱れてしまっている。

表情が左右非対称でリリさん自身も自分の感情を制御できてない感じとか、手元の表情(画面に映ってない左手の表情も含めて)や立ち方、体ぜんぶで感情が伝わってきて、本当に素晴らしい。

線はやわらかくて繊細なのにしっかりとそこにいるという強い存在感があって、コタチユウさんの表現は天才だといつも思う。

しかもこの作品の場合は、実写で使える表現(色やエフェクト・構図)に制限あって、360度カメラにあわせたパースというめちゃくちゃ難しくて手間のかかる工程もあって、イラストについて勉強すればするほど、技術的にも労力的にも気が遠くなるようなものすごいことをされていることを思い知ってしまう。

なにより、一枚一枚に丁寧に描かれた表情の奥にある感情が、今もこんなに、自分の胸を震わせ続けている。


コタチユウさんが描くリリさんと出会えて、本当に、本当に、本当によかった。

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