過ぎ去っていく時の中で。【風雨来記4感想】

母里ちあり

■「風雨来記4:母里ちあり編」について書きます。ストーリーのネタバレ有り。
■「自分はこう考えたよ」という、個人的な感想・考察記録です。
■ 記事内で、ゲーム内のスクリーンショットを、権利元様を表記した上で引用しています。

■ 特に記載のないイラストは、管理人による二次創作です。



光陰矢の如し。

自分が、リリさんと出会った日から、そして風雨来記4を始めた日から、今日で五ヶ月が経ちました。
良い機会なので、今回はすこし当時のことを振り返ってみたいと思います。



きっかけ

風雨来記4を知ったのは、発売から数日が過ぎたあとのこと。
趣味用のTwitterアカウントのタイムラインに流れてきた情報(「風雨来記4」面白そう、みたいなツイート)によってでした。



自分が旅を始めるきっかけになった風雨来記シリーズの新作が、令和の時代にまさか発売されていたなんて!と、すぐに興味が湧き、本棚の隅で三年以上埃をかぶっていたPS4を引っ張り出して、ダウンロード版を購入。


風雨来記4の内容については、岐阜が舞台で360度カメラのリアルタイム走行シーンがあるらしい、ということ以外、なんにも知らないままでの「岐阜入り」でした。

それが、2021年7月12日のことでした。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



ゲーム開始~出会い

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



オープニング時点で期待以上のクオリティでしたし、めちゃくちゃワクワクしました。
日陽さんも図書館の女の子もすごく可愛かったし、とにかく映像もすごくて、PS4持ってて良かった!と感動していました。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


岐阜を発ったあとは、まず東へ。
東濃方面経由で、飛騨へ向かうことにしました。


東濃に寄ったのは、苗木城が、かつて旅した中で個人的に思い出深い場所だったこと。
飛騨を目指した理由は、日陽さんと会えるかも…という期待によるものでした。

一日目は、キングオブ酷道の記事を書いて終了。
二日目はそこから北上して、飛騨に入り、日陽さんとは会えないままに辿り着いた種蔵で、「赤い髪飾りの女の子」と出会いました。
そのときは、特に大きな出来事もなく、出会って別れただけの女の子。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



日陽さんとの再会を期待し、その後も飛騨を巡る中で、例の髪飾りの子と繰り返し再会しました。

彼女が会う度に見せる「違和感」。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



その「謎」と、会話の端々に過去作――風雨来記1のヒロイン達をどこか思い出させる言動に、どんどん興味を引かれていったのです。
(※会う度に服が変わること、三度同じことを繰り返す出会い、カニに目がないこと、同じ場所に留まっていることなど――
 似ているというより、「このシチュエーションがなつかしい」という感じです)



実は最初、その外見の変化について、全く意識していませんでした。

ポニーテールと二つ結び、白いワンピースとデニムパンツ。
意識してみれば全然違うんですが、自分はずっと、彼女のスタイルが二種類あることにすら気付いていませんでした。
ゲーム内テキストで「先日と服装が違う」「また服装が違う」と書かれていて、「あれ、そうだっけ?」と首を捻っていました。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



一目惚れとは逆に、外見は全然意識していなかったのかも。
表情がよく変わる子、というくらいの認識だったような。

名前を聞いた後くらいからは逆に、別人と言うくらい髪型や服装で見た目の雰囲気が違うと感じるようになったのですが、なんで当時は見分けつかなかったんでしょうね。
今考えても不思議です。


そんな感じでゲームを進めて、ここでひとつ、大きな転機がありました。

種蔵での三回目の出会いの後、彼女と会うことがなくなったのです。
(『いわゆるフラグが折れた』、というやつですね)

それまで特に意識してなかったはずなのに、会えないとなると、ふと寂しくなる。
いつの間にか、新しいスポットを訪れるたびについ彼女を探してしまう自分がいました。


吊り橋効果(Misattribution of arousal)

客観的に考えると、この時点ではあくまでも、彼女の見せた「謎」への興味から生まれる感情だったと思います。

謎があればそれを知りたい、物語の続きが見たいというのは本能的な思考でしょう。
彼女を探して、会えなくてがっかりして、哀しくなってくる気持ちも、そこから来るものだ、と「頭では」分かっていました。


分かってはいましたが、思考と感情が別に動くことがあるのが、人間の面白いところですね。
段々と、まるで「吊り橋効果」のように「錯覚」させてくるのです。


ここまで会いたい、知りたいって思うのって、もしかして彼女(名前も知らない)自身に興味があるからなのでは…?と。




期待する。
がっかりする。

その繰り返しのプロセスが、ずーーーっと心の吊り橋をグラングランと揺さぶり続けるので、段々錯覚じゃなくて本当に自分は彼女に夢中になりつつあるんじゃないかと言う気分になっていきます。


それで、
ゲーム内日付で15日目だったか、16日目だったか。
そこで、ひとつの決断に迫られました。

たぶんきっと、この旅ではもう出会えないのだろう。
そう判断した上で、自分はここからどうするか。


心情的には、たとえリセットしても、彼女の物語のつづきを知りたいと言う思いでいっぱいになっている。

一方で自分のゲームスタイルとしては、初回プレイはあるがまま、リセットややり直しなしで、クリアまでやり通したいというこだわりがあって、これを一度崩すと、素直な気持ちで物語のつづきを楽しめなくなるかもしれない。


最初に考えたのは、とりあえずこのまま一度クリアしてしまって、すぐに二周目を始めてあらためて彼女に会いに行けばいい、という方法。

けれど、もやもやを抱えたままクリアまで行けるのか、それが初エンディングで納得できるのか。
というか、下手したらエンディングに行く前にゲームを止めてしまうんじゃないか、とも思う。


それは実体験というか、自分にとっての風雨来記3が、そうだったのです。
最初のプレイで、ヒロインと途中から会えなくなって、ああこれは一人旅になるんだなと感じてから、続けるかやり直すか考えながら、特に大きな理由はなかったけれどそこで何となく手を止めて、そのまま一度もクリアしないままになっていました。
(4プレイ後にあらためてちゃんとクリアしました。すごく良い作品でした)



本当に、特に理由はなく、なんとなく手を止めてしまった。
だから今度も同じようになってしまう、かもしれない。

途中でやめてしまうくらいだったら、思い切ってここでやり直した方がいいんじゃないか。


どうするか、一日、考えて。
結局保存していた途中のデータから――三回目の種蔵での会話から、やり直しました。

そんな経緯によって積もり積もった感情によって、モネの池で再会できた時には、錯覚との境界はすっかり決壊していたと思います。



この、吊り橋効果的な「会えるかどうか分からない不安」「再会できたときの喜び」は初回プレイ中最後までずっと継続しました。

自分の場合はこの時下呂温泉での撮影会を見つけられなかったこともあって、芝桜でのお見合い話から付知峡まで丸々1週間、会えない期間が続きました。

もうこのまま、会えないままクリアまで行くしかないのか……と諦めかけたところでの再会の感情の震え具合は、特に筆舌に尽くしがたかったです。

風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



それから、ケンカ別れしたあとの馬籠宿。
この時は、再会の喜び以上に、見つけられてよかったという強烈な安堵を覚えました。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




初回プレイということもあって、毎日スタミナが切れるまで取材を繰り返していたため、プレイ時間は30時間くらい。

そのあいだずっと、自分の心からよくもこんなに湧いて出てきたなぁと呆れるくらいにリリさんへのいろんな感情を苦しくも楽しく抱えながら、最初のエンディングを迎えることができました。
出会いから、リアル時間で一週間後のことでした。


涙はない、ドラマチックなBGMもない、静かに穏やかに、そして力強い言葉とともにあった笑顔の別れは、今も強く心に残り続けています。



風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




プレイスタイルや、タイミングも大事

「偶然」に期待するしかない状況で、会えない時間の長さに比例して蓄積していく感情が、「偶然」の再会で爆発するあの感覚は、初プレイのときの、たった一度しか味わえない、宝物のような体験でした。


メタ視点で考えるならば、娯楽だけに絞ってみても日々大量の情報があふれ、あっという間に流れていくこの時代に、ひとつのゲームにじっくり腰を据えさせた上で、時間・根気・運を要求される「運命の出会い」の演出は、かなりハードルの高い遊び方の提案だとは思います。

自分も、万人に「攻略情報見ずに(心と時間を削りながら)自力でクリアするのがオススメ!」とは言えません。人によって、色んな事情やプレイスタイルがありますしね。




風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG




また、ネタバレを排除して楽しもうと思っていたって、発売から時間が経つにつれて様々な情報が溢れかえって、意図せず核心的な「攻略」情報に触れてしまう可能性だってあります。

実際、2021年12月現在、「風雨来記4」でネット検索すれば、トップページにネタバレ画像が並んでしまっていますしね。

発売から少し遅れてこのゲームと出会った自分が、最後まで偶然を保ち続けたままで「奇跡みたいな確率」を乗り越える旅を体験できたというのは、実はとても幸運なことだったんじゃないかな、と今は思います。


風雨来記4/2021 Nippon Ichi Software, inc./FOG



振り返ってみると、最初は、リリさんの物語の構成――「謎」の提示によって、先がとても、気になって。
それが見たいという原動力と、見られないかもという不安が、リリさんというキャラクターへの関心に繋がって。
その物語に揺さぶられて活性化した心から、このゲームを全力で楽しもう、というワクワクした気分が生まれて。


そういう流れが有機的に繋がって、自分は風雨来記4を二百時間以上も楽しんでプレイし続けられたのかな、と思います。

たとえばあのとき、自分の中でなにかひとつ違っていたら(たとえば仕事が繁忙期だったり、他の趣味に夢中になっているときだったり)、そもそもこのゲームをプレイしてすらいなかったかもしれないし、仮にプレイして、リリさんと出会って、同じ物語を見たとしても、何も思わず、何も響かなかったかも知れない。

あるいは、一ヶ月、一年、五年、十年、出会ったタイミングが前後にずれていたら、自分が受け取ったものはそれぞれ全く違うものだったかもしれない。
少なくとも二十代の頃の自分だったら、リリさんの語る価値観について、理解も共感もできなかったようにも思います。

そうしたら、今こうやってリリさんや風雨来記4への思いを書き連ねている自分もいなかった、と思うとなんだか少し不思議な気分ですね。


ちょうどリアル事情で、千尋君と同じく、やりたい仕事をできていながらもこのままでいいのかと迷うことの多い時期で、趣味・娯楽についても、爆速で日々流れ続けていく情報の中にいるのが当たり前でした。

そんな中で一度立ち止まり、自分の本当に大切にしたいものに向き合うための勇気をもらえました。
今は、まだ小さいけれど第一歩を踏み出すことはできた気がしています。



あとがき

風雨来記1から20年は実感としてあっという間だったので、次の20年も、その次も、きっとあっという間な気がします。
そしてそんな時間の流れを、歳を重ねてくことを、いま、ものすごくポジティブに考えられるようになったのは間違いなく、風雨来記4という作品の影響です。



これからも、まだまだもっと、できるだけたくさん、自分の心が動いた色々なことを言語化したり、表現していきたいですね。






おまけ:自分のリリさんへの印象(追加順)

・なんか気になる
・言動が面白い
・わけわからないのが面白い
・わけがわかるとまた面白い
・価値観をゆさぶられる
・話が興味深い。無限に聞きたい
・ワクワクする
・いいオンナすぎる…
(ここまで7月/一周目エンド)


・尊敬
・やっぱりわけわからん

・可愛い
・綺麗

・えらい
・すごい

・つよい
・やばい
・エモい
・やばい

・ふるさと
(ここまで8・9月/二人旅エンド)

・やっぱりわけわからん
・理解できないのがやっぱり面白い

(ここまで10月)

・切り替えの早さ
・判断力・決断力がすご

(ここまで11月)

・ちょっとずつ、理解るようになってきたかも
・というか、分からない理由が理解ってきた

・かしこい
・聡明

・兄さんと同じく妹も優秀
・頭の回転が速い 
・理系? 
(ここまで12月)

コメント

  1. うに村 より:

    初めまして。
    いつもねもとさんのブログを楽しく拝読しております。

    私この度、風雨来記4の後日談二次創作をpixivの方で書き終えまして、ちあり編の内容を考えるにあたり、真に勝手ではありますが、ねもとさんの考察を一部参考にさせていただきました。
    宣伝がましくて申し訳ありませんが、もしよろしければ、ご一読くださると幸いでございます。

    うに村

    • ねもと より:

      うに村さん

      はじめまして。ご丁寧にご連絡いただき、ありがとうございます。
      多忙故、いつとはお約束できませんが、拝見させていただきましたらあらためてご返信いたしますね。

  2. 水洋日 より:

    こんにちは。

    リリさんとの出会い、私は逆に見た目が好み(一目惚れ?)という理由でリリさんルートに入りましたが、話が進むにつれて内面的な部分にも魅了され、付知峡で相貌失認が明かされた時には、さらに彼女のことを知りたいという気持ちでいっぱいになりました。

    「偶然」少しでもタイミングがズレていたらと考えると、今を大切にしなきゃと思うと同時に今とは別の状況もあったのかとも思ったり、複雑な気分になりますね。

    • ねもと より:

      こんにちは。
      水洋日さんの出会いを聞かせていただきありがとうございます。
      プレイヤーの数だけ旅があるということを実感しました。
      複雑な気分があるから、逆に、大切にしたいと言う気持ちも強まるのかもしれません。

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