2年夢見た、しまね旅(前編)

2023島根旅

島根ツーリングしてきた

この夏、バイクに乗って島根を十日ほど旅してきた。
訪れたい場所がたくさんあったので、毎日日が昇ってから日が沈むまで色々な場所を巡り続けた。


面白いことがたくさんあって、自分が生きてきた中で一番、ワクワクに満ちた期間だったと思う。
毎日が「来て良かった!」「あー、幸せ!」で溢れていた。



もちろん楽しいことばかりじゃなかった。
道中恥ずかしい失敗もしたし、半分くらいは雨に見舞われたし、バイクや装備のトラブルもあった。
降り続く雨で着替えがカビてしまったり、カメラが結露して使えなくなったり、ガス欠間際なのにガソリンスタンドが見つからずに右往左往したり。


それでもトータルで振り返ってみれば、最高に楽しい旅だった。
なにより、当初の目標通り、リリさんをもっと好きになって帰ってこられたのが本当に嬉しい。



島根と言えば、個人的にはやはり出雲大社や出雲神話のイメージが強かった。
だから、もともと出雲神話に関係する神社や遺跡を巡ることを目的にしていたのは出発前にこのブログで書いた通りだ。








その上で今回、実際に島根を訪れて一周してみると、「予想よりはるかにバラエティ豊かな土地だった」という感想だ。


深い山と渓流、のどかな田園風景、美しい湖、どこまでも続く長い長い白砂と松の浜辺……という典型的な「田舎の風景」ももちろん素敵だったが、そこだけには決して留まらなかった。






牧草地やたくさんの風車が立ち並ぶ丘、夕日に沈む巨大な灯台、一面緑色の海岸、なぜか木の全く生えない大湿地……

自分が「山陰地方の島根はこんな感じだろう」と抱いていたイメージが、何度も覆された。





歴史の古い町並みや、江戸時代に行われたたたら製鉄の跡地を転用した見渡す限りの棚田。
「縄文時代に火山活動で森ごと地下に埋まってしまった大木」にも、とても感動した。







フェリーで訪れた、火山が陥没してできた絶海の離島には、断崖と広大な丘が広がっていた。





一部で有名な「べた踏み坂」も、実は島根の風景だと知った。
(厳密には島根と鳥取をまたぐ橋で、島根側から望遠レンズで撮るとカメラの圧縮効果によって「超急坂」に見える)



標準レンズではこれが限界。雰囲気は感じられるだろうか





事前にあまりよく知らず、なぜ世界遺産に選出されたのかも分かっていなかった石見銀山も、訪れてみると非常に面白く、ワクワクし、興味深かった。











今回島根を訪れてみて、神話から自然まで本当にたくさんの要素が散りばめられた土地だと思った。
そしてそのどれもが、自分が事前に島根に対して抱いていたイメージを上回るスケールで、心に響くものだった。










この旅のキーワードをふたつ挙げるなら、「発見」と「気づき」だったと思う。

今回の記事では前後編2回に分けて、旅する中でこの夏島根を訪れるまで知らなかった、訪れてはじめて「自分が発見したこと」「気付いたこと」を中心に、島根旅をまとめてみようと思う。











・無料キャンプ場が非常に多い!

無料キャンプ場が島根県内に数十カ所あった。
これは結構驚きだった。

「風雨来記」の舞台だった2000年代までの北海道には無料キャンプ場が多く、キャンパーの聖地と言われていたけれど、アウトドア人口の増加・一般化、ゴミ処理問題やマナー問題など諸事情によって今は有料化されたところが少なくない。
本州ではもっと顕著で、昨年巡った岐阜でも無料キャンプ場は片手で数えるくらいだった。


もちろん、無料だからいい、有料化したら残念と言うようなことはない。
有料になった方が設備が整うし、お金を払ってでもキャンプを楽しみたい人が集まるため利用者のマナー向上にも期待できるという考え方もある。



それはそれとして、島根では、現在でも無料で利用できるキャンプ場が県内にたくさん存在することを今回訪れてはじめて知った。

「キャンプできる場所」や「キャンプしてもいい場所」ではなくて、明確に「キャンプ場」として、行政なり法人なり個人なりによって整備・管理されている施設だ。



ロケーションは様々、めちゃくちゃバラエティー豊かだ。

海辺、丘、川辺、市街地のそば、山奥、無人島。
温泉が併設している(というか温泉施設が管理している)無料キャンプ場もあった。

無料だけでなく数百円程度の格安キャンプ場も多くて、気ままなキャンプツーリングをする上で非常に恵まれた土地だと思った。

(ただし、基本的にどのキャンプ場も事前連絡・予約は必須。利用希望の際は早めに連絡を)






・温泉だらけ!

これも自分は事前に全く知らなかったことで、走ってみてびっくり、温泉がめちゃくちゃ多い。

いや本当にめっちゃくちゃよく見かけた。
合計の数がどれほどかは分からないけど、人口密度ならぬ「温泉密度」が高いのは間違いない。

街から街へ、十~二十キロ走るごとに「○○温泉」という感じで看板を見かけた。





いわゆる「温泉街」だけでなく、野湯、つまり川辺や山奥などで自然に湧いている天然の露天温泉もあった。
中には、熱すぎて「温泉たまご専用」という温泉も。

また、無人の温泉販売所、いわゆる「温泉スタンド」も見かけた。
蛇口をひねれば無料で温泉が出る施設なんかも。


ヤマタノオロチ伝説の残る斐伊川の野湯。入浴者のマナー問題から残念ながら今年から入浴禁止に。
出雲大社すぐそばの温泉スタンド
スセリヒメ縁の地から湧いている無料の温泉。蛇口から熱く濃厚なお湯がじゃぶじゃぶ。






島根は、旅をする中で常に温泉が身近な土地だった。
これは、県のちょうど真ん中あたりに活火山を抱えているのが理由なのかもしれない。

隠岐諸島がカルデラ、つまり火山の中心部が陥没して出来た島であることも今回島を訪れてはじめて知った。




・水が美味しい!

温泉だけでなく、湧水もとても豊富だった。

昨年旅した岐阜はどこに行っても清流が爆発的に溢れていた。
特に飛騨は美しい水の宝庫で、思い返しても水のイメージがつきまとう。

一方、島根は斐伊川をはじめとして印象的な川はいくつかあるものの、全体としてそこまで極端に清流が多いという印象は抱かなかった。

ただ、にも関わらず、あちこちで引用可能な湧水が噴出していた。





それもちょろちょろではなく、たいていドバー―――ッと。
結構ものすごい勢いで。
コップやペットボトルに汲めば一瞬で結露する、よく冷えた美味しい水だ。





だいたい一日一回はそういう湧水に出くわしたので、水の味の違いというか、のどごしの違いはどこも結構違っていて、旅の楽しみになっていった。


山の中やお寺、神社、道ばたなど、最終的には道中十カ所ほど、いろいろなところで湧水と出会い、のどと体をうるおしながら旅をしたのだけど、そのせいか非常に体調がよかった。

良い水を飲むと、食欲も自然に治まるのが不思議だった。
疲れも吹き飛び、気力だけじゃなく体力も満たされて、元気いっぱいで体が動いた。

あれは、どういう原理なんだろう。



(なお、風雨来記4の主人公に習って、クエン酸入りのラムネ菓子を道中いつも欠かさないようにしていた。
 水だけでは血液が薄くなるので、熱中症対策としてミネラル補給には常に気を使った)




・「山深い」けど「山深くない」

島根にはニホンカモシカがいない。
山陰と山陽を分ける山地には標高1300メートル以上の高い山がないため、東日本のようにカモシカが人から逃げられる山深い場所がなく、明治時代までに狩り尽くされて絶滅したというのが定説らしい。
ニホンカモシカは名前はシカだがウシの仲間なので、昔から美味しいことで知られていたそうだ。

以前そんな話だけ聞いて、いやいや島根って山深い土地でしょと思っていたが、これは実際に訪れて納得してしまった。


中国地方は、以前自転車で訪れたときには感じなかったことだけどバイクで走ってみると縦方向(南北)が思っていた以上に「狭い」。
海辺の街から山のほうへ走っているうちに、いつのまにか広島や岡山との県境に達していたということが一度や二度じゃなかった。
たとえば宍道湖から南へ50キロ、1時間ちょっとも走ればもう、山を越えて広島県に入ってしまう。
そこからあと1時間も走れば瀬戸内海、尾道についてしまう。







県境はだいたい峠、つまりその周辺で一番高いところに引かれているけど、この峠もそれほど高くない。バイクなら10分もかからず登り切ってしまえるくらいだった。
峠とすら気付かず、いつの間にか広島県に入っていたことさえあった。


道中、島根県内の通行止めのために迂回が必要となる箇所があったが、「峠を越えて広島に入り、迂回してまた峠を越えて島根に戻るというルート」が道路に公然と示されているくらい、「山陰」と「山陽」の往き来の敷居は体感として低く感じた。


島根が山深い土地、という印象が強いのは、海辺に盆地や平野部が少なく、海岸からすぐに山地が始まる地形だからなのかもしれない。

実際、高い山は少ない一方で山の裾野に広がる森は自然豊かな印象だった。
そしてその山地はゆるやかに、日本海と瀬戸内海をつないでいる。



個人的に今回、山陰と山陽の距離感を自分自身の体験として感じられたのは、今後たとえば自分が考古学や神話の「出雲」と「吉備」のつながりを考えたりしていく上で、自分なりのひとつの足がかりになったと思う。






・横にやたら広い!

縦には短い島根県だけど一方で、横にはとても広い。


京都から島根の県境まで300キロあるんだけど、島根自体も、東の端の美保関町から西の端の益田市まで200キロある。

北海道換算で言えば、札幌から稚内までが約300キロ。
札幌から帯広がだいたい200キロだ。

島根県の面積は北海道の十分の一以下だけど、東西に移動する際には体感的にかなり広く感じた。





西(石見)と東(出雲)では国が違うために、明らかに文化が結構違っているのが面白い。

今回の旅では時間が足りず、西の端までは到達できなかったのが残念だ。
また機会をあらためて訪れようと思った。




余談:ちょっと気付いたこと・感じたこと


1:コインランドリー

これは島根に限ったことではないんだけど、「現代は便利になったなー」と思ったことのひとつとして、24時間営業のコインランドリーを多く見かけたこと。
コンビニはない山間部でも、コインランドリーはあるというケースもちょくちょく見かけた。


キャンプ中や温泉入浴、あるいはちょっとした買い物や観光している間の一時間ほどで洗濯・乾燥できるのは非常に便利だ。

10日間のツーリングとなれば着替えの量だけで結構な荷物になるけれど、道中コインランドリーをうまく活用すればかなりの軽量化ができるな、と思った。

風雨来記4でもそういう描写があったけれど、これまであまり意識していなかった。
次の旅では考慮に入れてみよう。




2:ガソリンスタンド
これも島根に限ったことではないけど、ツーリング中は、ガソリンスタンドでの給油をじゅうぶん余裕を持って行おうとあらためて思った。
ガソリンスタンドはこの二十年ほどで半分以下に減ったという。

山間部では夕方、ある程度大きな町でも夜間は営業終了しているところも多い。
また、お盆や日曜日は休日のところも少なくない。



余裕を持ってと言うか、ある程度事前に給油する場所を考えて走らないと、人里離れた山の中でガソリンが尽きるはめになってしまう。


今回自分もそうなりかけて、一日中、走っても走ってもどこのお店も閉まっていた。

結局、たまたま電話連絡をしたガソリンスタンドの店員さんが、休みだったにもかかわらず店を開けて給油してくれたので最悪の事態はまぬがれたけれど、恐ろしいことにこのときの給油量がタンク容量とほぼ同じ……つまり空っぽだったので、あと数キロ走っていたら……と想像すると本当に恐ろしい。

(一応保険として、バイク保険に付帯するロードサービスに、ガソリンを10リットルまで届けてくれるサービスが含まれてはいる。が、山奥や真夜中にガス欠したら、相応の時間がかかるだろう)



自分のバイクの航続距離は350キロほどでかなり燃費が良い方だけど、それでも今回の旅ではほぼ毎日給油を必要とした。
今後、幹線道路を離れて山間を長距離走るツーリングでは、お守りとして予備のガソリン携行缶を用意することも検討すべきかもしれない。






3:100円ショップ
ある程度大きな街にしかないものの、100円ショップ……というかダイソーの品揃えは本当に便利だった。
100円ショップ自体は20年前の初代風雨来記の頃にはすでに普及していたけれど、近年の品揃えの充実度はすさまじいものがある。

寝袋とかテントマット、調理ストーブとかのキャンプ用品も普通に売っていて、自分はあまり装備にこだわりがない方なので、キャンプ道具のいくつかはダイソーのものを使っている。


今回も旅の道中、幹線道路沿いのダイソーでドライシャンプー(ウェットティッシュタイプのシャンプー)や替えの下着、靴下、USBーCケーブル、モバイルバッテリー、SDメモリーカードなど、雨天の影響やトラブルなどで急遽必要になったものを色々購入することができて事なきを得た。
本当に便利だった。






4:牛さん
個人的に意外なところでは、牧場が多くて、特に乳牛の厩舎を至るところで見かけた。
島根と酪農、というのは個人的にあまりイメージはなかったのでかなり印象的だった。





また、隠岐では遊歩道を放牧中の牛に通せんぼされたりして、よくも悪くも牛がすごく身近だった。
あんなに大量の牛のすぐそばを、神経を尖らせながら(でかいし角あるしじっと見てくるのでけっこう恐い)歩く機会はこの先ないかもしれない。

旅に出る前には思いも寄らなかった、得がたい経験だった。


詰んだ瞬間。牛が気まぐれでどこかへ去るのを期待する他ない






温泉上がりに飲んだ島根の牛乳
















というわけで前編はここまで。

次回後編では、「出雲国風土記」や「古事記」など島根で感じた日本神話に関することや、神社・遺跡の探訪体験について書いていこうと思う。





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